きんぼしのこころ


32年前きんぼしを開店するにあたり、美味しい焼き鳥を出す為には、命となる塩を探すことが大事と塩探しが始まりました。市販の塩は口の中に長く塩辛さが残り、塩が勝ってしまう為、串を何本も食べる焼き鳥には不向きなものでした。

欲しいのは「塩辛さが後に引かない、優しくてまろやかな塩、さらに自身の旨味で焼き鳥をおいしくしてくれる塩」

 試行錯誤の末に出来た塩は日本人に馴染みの深い海水塩を天然自然素材の昆布、カツオ出汁の中に入れ、再度煮詰めてサラサラの塩にする手間のかかる作業の後に出来るもので、思惑どおり、後に引かない角の取れた優しくまろやかな塩で、旨味調味料なしでも肉の旨味を何倍にも引き出してくれる焼き鳥に最適な塩に仕上がりました。


焼き鳥は本来季節感の乏しい料理。焼き鳥屋でも日本の四季を楽しんでもらいたいという想いから、春は竹の子、ハマグリ、そら豆、夏はマンゴー、ナス、茶豆、秋は松茸、銀杏、ポルチーニ、冬は鴨、牡蠣、長芋、など季節の食材を使った一品をお出ししています。

また焼き鳥だけでなくフレンチやイタリアンで出すようなものをきんぼし風にして気軽に楽しんでいただけます。

名物となった子羊香草焼き、フォアグラマンゴー、フォアグラ大根、ホタテの舌平目巻き、特製バルサミコソースを使ったトマトサラダ、など人気メニューが多くあります。


炭は生き物と同じように、時間の経過とともに変化します。火の付き始め、ピーク、焼け細り、灰へと変化します。同時に着火した炭も、太さ、硬さ、乾燥度などで燃え方も違います。これら千差万別の炭を継ぎ足しながら焼き台を最高の状態で何時間もキープさせ、尚且つその中で強火、弱火を作るのも経験の賜物です。


焼き鳥は鶏の色々な部位を使います。ねぎま、手羽先、かわ、なんこつ、砂肝、心臓、レバー、ぼんじり等など鶏の部位によって塩の感じ方が違います。それは脂の量、旨味の強さ、形状、カットの仕方、重さなど様々な要素が原因です。焼き台に何十本と載った違う部位の串一本一本に対し、経験に基づく感覚でそれぞれの最適な量を、微妙な調整が出来る人間の指先から直接落とします。これが焼き台前に立てるまで何年もかかる所以です。



厚みを揃えた串達です

毎日数千本刺す串でもお客様にとっては一期一会の串。最高に美味しい焼き鳥をお出しするには、形も揃えて丁寧に刺す事が大事。目方に気をつけ、あちこち波打たないように刺し、全部長さも揃える。その結果一番大事な”同じ厚み”の串が仕上がる。そうしないと一本の串でレアとウエルダンが出来てしまうし、塩感も違ってしまいます。

焼く前の串たちが美しく揃ってないとおいしい焼き鳥は焼けません。

焼き鳥は串にかぶりつくのが美味しい食べ方です。女性の方も恥ずかしがらずに豪快に召し上がって下さい。(根元のところが食べにくくなったら、箸で先の方に動かして食べて下さい。)

 きんぼしではこの食べ方で美味しくなるよう、一本一本、心を込めて刺しています。

例えば「せせり」の場合、脂身の部位と締まった部位を交互に刺し、トップに一番美味しい部位を刺しています。何人かで食べる時に、串から抜いてお皿にバラしてお箸で食べるのは美味しさが半減してしまいます。熱々のうちにお一人様一本ずつ食べて頂いた方が、皆様が美味しくお召し上がりになれます。

 

おいしく食べていただく工夫をしています。

 

焼き鳥は焼きたてが一番おいしい。だから盛り合わせはやらず、焼きたてを一品ずつお皿に乗せてそれぞれの人が取りやすい位置にお出しする事としています。

また地元美濃焼の名窯玉山窯の織部皿をメインで使い、視覚的にもおいしく見えるようお出ししています。